日本における国際戦略の重要性と農政に関して
~CSISジョン・ハムレ氏と生源寺真一氏のインタビューより~
-最終更新日:2011年1月10日(月)-
本日も1月8日(土)と1月9日(日)の読売新聞1面「日本の革新」からである。このシリーズが素晴らしいのは、日本の国家戦略について、様々な視点から日本と世界の主要な人物のオピニオンをわかりやすく掲載していることである。筆者は朝日新聞の「孤族の国」も好きであり、これらはまさに新聞の良心と呼べるコラムだろう。
まずハムレ氏のコラムから。氏の主張を端的に述べると「日本は日米同盟に依存せずに独自の国家戦略を形成すべきだ」というものである。筆者もこれに強く同感で、日本の国家戦略のなさには辟易するばかりである。その主要な要因が、選挙目的で短絡な公約を各政党が打ち上げることよって、ちぐはぐな一貫性のない国政になってしまっていることだというのはほとんどの方に同意いただけるのではないかと思う。
また、氏は中国との関係が極めて難しくなるだろうということを予測しながらも、かつての冷戦のような状態は作ってはならないとする。上の参考図書はハムレ氏が所長を務めている戦略国際問題研究所の書籍であり、和訳すると「アメリカ政治像における中国」といったところだろうか。今後ビジネスパートナーとしては日米とも欠かせない存在であることには変わらず、その上での良好な米中・日中関係とはどのようなものだろうか。考えさせられるものがある。
そして、氏は日本の国連の常任理事国入りを強く支持している。もう少しで日本は非常任理事国ですらなくなってしまうことに対する危惧も抱いている。筆者も国際舞台における日本の関与度が希薄化することに懸念を感じるのである。オバマ大統領が初めて来日した時に、日本のマスコミにも戦略性があるのかという内容の発言をした。しかし、その後は政治にも全く統一性も戦略性も見えない。このような日本の現状を早く脱却することを望むものである。やはり、数十年スパンの国家戦略についてはアメリカのほうが遥かに先をいっているのである。
次に生源寺氏の農政に関するコラムである。氏はTPPか農業重視かの二元論を避け、国益のためにどう両立すればいいかを建設的に語っている。ともすれば業界団体の圧力によって捻じ曲げられてしまいがちな国政であるが、自由貿易協定それ自体は日本の今後の戦略に欠かせない。ここは感情論ではなく氏が述べるような両立可能性について構築性をもって議論されなければならないだろう。
現状の戸別所得保障制度のように作物価格の下落に対して補償を行うのがヨーロッパを含めたトレンドの施策である。作物価格が下落した状態は国際競争力を維持しやすく、これに対してわざわざ国が物価調整する必要がないというのが理由である。この施策を維持したまま、工業部門は自由化することによって日本全体の産業の浮揚を狙えることは誰にでも想像できるだろう。あとはどのような着地点にすべきかを政治がリーダーシップをもって解決するだけだ。
それに、日本の農業も高度化して輸出に特化しなければならない。いつまでも国内の需要を満たすだけの農業では先進国として限界に達している。日本の甘い果物は海外富裕層が頻繁に購入する。例を挙げると、中国にとって縁起のいい色である赤に対して、真っ赤な青森のリンゴが爆発的に売れている現象が挙げられる。このような作物に特許性を帯びさせることができれば、日本独自の産業に発展するのである。
それにしてもこの読売新聞の「日本の革新」コーナーは新聞の意地を感じる。実現には相当労力を費やしているものと思われる。情報が氾濫する世界において、新聞社のプライドを見せているといったところだろうか。筆者は、購読に値するプロの文章は民主主義を保持する能力はいまだ十分にあり、不可欠であると感じている昨今である。
-最終更新日:2011年1月10日(月)-
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本日も1月8日(土)と1月9日(日)の読売新聞1面「日本の革新」からである。このシリーズが素晴らしいのは、日本の国家戦略について、様々な視点から日本と世界の主要な人物のオピニオンをわかりやすく掲載していることである。筆者は朝日新聞の「孤族の国」も好きであり、これらはまさに新聞の良心と呼べるコラムだろう。
まずハムレ氏のコラムから。氏の主張を端的に述べると「日本は日米同盟に依存せずに独自の国家戦略を形成すべきだ」というものである。筆者もこれに強く同感で、日本の国家戦略のなさには辟易するばかりである。その主要な要因が、選挙目的で短絡な公約を各政党が打ち上げることよって、ちぐはぐな一貫性のない国政になってしまっていることだというのはほとんどの方に同意いただけるのではないかと思う。
また、氏は中国との関係が極めて難しくなるだろうということを予測しながらも、かつての冷戦のような状態は作ってはならないとする。上の参考図書はハムレ氏が所長を務めている戦略国際問題研究所の書籍であり、和訳すると「アメリカ政治像における中国」といったところだろうか。今後ビジネスパートナーとしては日米とも欠かせない存在であることには変わらず、その上での良好な米中・日中関係とはどのようなものだろうか。考えさせられるものがある。
そして、氏は日本の国連の常任理事国入りを強く支持している。もう少しで日本は非常任理事国ですらなくなってしまうことに対する危惧も抱いている。筆者も国際舞台における日本の関与度が希薄化することに懸念を感じるのである。オバマ大統領が初めて来日した時に、日本のマスコミにも戦略性があるのかという内容の発言をした。しかし、その後は政治にも全く統一性も戦略性も見えない。このような日本の現状を早く脱却することを望むものである。やはり、数十年スパンの国家戦略についてはアメリカのほうが遥かに先をいっているのである。
次に生源寺氏の農政に関するコラムである。氏はTPPか農業重視かの二元論を避け、国益のためにどう両立すればいいかを建設的に語っている。ともすれば業界団体の圧力によって捻じ曲げられてしまいがちな国政であるが、自由貿易協定それ自体は日本の今後の戦略に欠かせない。ここは感情論ではなく氏が述べるような両立可能性について構築性をもって議論されなければならないだろう。
現状の戸別所得保障制度のように作物価格の下落に対して補償を行うのがヨーロッパを含めたトレンドの施策である。作物価格が下落した状態は国際競争力を維持しやすく、これに対してわざわざ国が物価調整する必要がないというのが理由である。この施策を維持したまま、工業部門は自由化することによって日本全体の産業の浮揚を狙えることは誰にでも想像できるだろう。あとはどのような着地点にすべきかを政治がリーダーシップをもって解決するだけだ。
それに、日本の農業も高度化して輸出に特化しなければならない。いつまでも国内の需要を満たすだけの農業では先進国として限界に達している。日本の甘い果物は海外富裕層が頻繁に購入する。例を挙げると、中国にとって縁起のいい色である赤に対して、真っ赤な青森のリンゴが爆発的に売れている現象が挙げられる。このような作物に特許性を帯びさせることができれば、日本独自の産業に発展するのである。
それにしてもこの読売新聞の「日本の革新」コーナーは新聞の意地を感じる。実現には相当労力を費やしているものと思われる。情報が氾濫する世界において、新聞社のプライドを見せているといったところだろうか。筆者は、購読に値するプロの文章は民主主義を保持する能力はいまだ十分にあり、不可欠であると感じている昨今である。
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