ジェームズ・マンゴールド監督「17歳のカルテ」
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ウィノナ・ライダー アンジェリーナ・ジョリー (1999年 米国)
-最終更新日:2010年10月9日(日)-
あまり日本でも上映機会が少ない類の映画ですが、精神医療を真正面から描いた映画の一つです。同じアメリカの「カッコーの巣の上で」という映画と比較されますが、こちらはスザンナ・ケイセンの実際の自叙伝「思春期病棟の少女たち」をもとに作られています。
どこが真正面かというと、精神疾患は昔は一度発症すると社会復帰が非常に難しい病気でした。現在でこそ社会的な認知と症状の軽症化が進んでいますが、昔は重症の方は一生入院するといったケースも稀ではありませんでした。この映画も、ちょっとしたことで入院となってしまった若い女性が、閉鎖病棟の社会へ安易に迎合してしまって、社会復帰を目指さなくなるといった内容を含んでいます。一見青春ドラマですが、精神医療の闇にかなり触れています。この映画は、このようなタブーに対してウィノナ・ライダーが映画配給権を買い取ってまで映画化にチャレンジしたものです。自身の体験からだそうですが、強い思い入れを感じさせます。
また、アンジェリーナ・ジョリーの演技も迫真がかっています。このような内容でありながら、アカデミー賞助演女優賞まで獲得しています。彼女はその後スターダムにのし上がりますが、「アレキサンダー」という映画で、大王の母親であるオリュンピアス役を演じたときの迫力から、やっぱり一流なんだなと思いました。
また、おなじみのウーピー・ゴールドバーグも婦長役で出演しています。彼女は、黒人差別をまざまざと描いたスピルバーグ監督の「カラーパープル」に出演しています。この映画に、あまりの虐待のつらさに精神病院に入院することになる女性を演じていますが、これらの関係で出演ということになったのでしょうか。この「カラーパープル」、スピルバーグ監督の隠れた名作だと思っています。アリス・ウォーカーによる原作も1983年にピューリッツァ賞を受賞しています。同様に上映機会が少ない作品ですが、お勧めの映画です。
ちなみにアメリカのスタンリー・キューブリック監督、ロシアのアンドレイ・タルコフスキー監督、日本の黒澤明監督は世界三大完璧主義監督と呼ばれています。最も尊敬する映画監督です。難解な映画が多いですが、いつか頑張ってご紹介できればと思っています。今後ともこのコーナーを宜しくお願いいたします。
【2010年10月12日火曜日 追記】
下記に、映画「カラーパープル」の原著(アリス・ウォーカー著 1983年 米国 ピューリッツァ賞)を紹介します。
この書籍、筆者の高校時代の読書感想文に指定された本でした。当時、かなり夢中になって読んで読書感想文を書いたら、学年通信に掲載されました。凄い嬉しかったのですが、理系の私としては異例だったのではないかと思います。
ただ、この小説の内容は黒人差別を生々しく描いており、当時のアメリカ社会でセンセーションを巻き起こしました。そのため、精神病院への入院や虐待の様子が険しい描写で描かれています。
「カラーパープル」は「黒人差別が終わって初めて紫色の花が綺麗に感じられるようになった」という意味で題名に用いられたのを覚えています。ピューリッツァ賞はアメリカでは日本の芥川賞に相当するものであり、歴史に残る小説でしょう。ぜひたくさんの方に読んでいただきたい小説です。
出演:ウィノナ・ライダー アンジェリーナ・ジョリー (1999年 米国)
-最終更新日:2010年10月9日(日)-
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あまり日本でも上映機会が少ない類の映画ですが、精神医療を真正面から描いた映画の一つです。同じアメリカの「カッコーの巣の上で」という映画と比較されますが、こちらはスザンナ・ケイセンの実際の自叙伝「思春期病棟の少女たち」をもとに作られています。
どこが真正面かというと、精神疾患は昔は一度発症すると社会復帰が非常に難しい病気でした。現在でこそ社会的な認知と症状の軽症化が進んでいますが、昔は重症の方は一生入院するといったケースも稀ではありませんでした。この映画も、ちょっとしたことで入院となってしまった若い女性が、閉鎖病棟の社会へ安易に迎合してしまって、社会復帰を目指さなくなるといった内容を含んでいます。一見青春ドラマですが、精神医療の闇にかなり触れています。この映画は、このようなタブーに対してウィノナ・ライダーが映画配給権を買い取ってまで映画化にチャレンジしたものです。自身の体験からだそうですが、強い思い入れを感じさせます。
また、アンジェリーナ・ジョリーの演技も迫真がかっています。このような内容でありながら、アカデミー賞助演女優賞まで獲得しています。彼女はその後スターダムにのし上がりますが、「アレキサンダー」という映画で、大王の母親であるオリュンピアス役を演じたときの迫力から、やっぱり一流なんだなと思いました。
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また、おなじみのウーピー・ゴールドバーグも婦長役で出演しています。彼女は、黒人差別をまざまざと描いたスピルバーグ監督の「カラーパープル」に出演しています。この映画に、あまりの虐待のつらさに精神病院に入院することになる女性を演じていますが、これらの関係で出演ということになったのでしょうか。この「カラーパープル」、スピルバーグ監督の隠れた名作だと思っています。アリス・ウォーカーによる原作も1983年にピューリッツァ賞を受賞しています。同様に上映機会が少ない作品ですが、お勧めの映画です。
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ちなみにアメリカのスタンリー・キューブリック監督、ロシアのアンドレイ・タルコフスキー監督、日本の黒澤明監督は世界三大完璧主義監督と呼ばれています。最も尊敬する映画監督です。難解な映画が多いですが、いつか頑張ってご紹介できればと思っています。今後ともこのコーナーを宜しくお願いいたします。
【2010年10月12日火曜日 追記】
下記に、映画「カラーパープル」の原著(アリス・ウォーカー著 1983年 米国 ピューリッツァ賞)を紹介します。
![]() | カラーパープル (集英社文庫) (1986/04/04) アリス ウォーカー柳沢 由実子 商品詳細を見る |
この書籍、筆者の高校時代の読書感想文に指定された本でした。当時、かなり夢中になって読んで読書感想文を書いたら、学年通信に掲載されました。凄い嬉しかったのですが、理系の私としては異例だったのではないかと思います。
ただ、この小説の内容は黒人差別を生々しく描いており、当時のアメリカ社会でセンセーションを巻き起こしました。そのため、精神病院への入院や虐待の様子が険しい描写で描かれています。
「カラーパープル」は「黒人差別が終わって初めて紫色の花が綺麗に感じられるようになった」という意味で題名に用いられたのを覚えています。ピューリッツァ賞はアメリカでは日本の芥川賞に相当するものであり、歴史に残る小説でしょう。ぜひたくさんの方に読んでいただきたい小説です。
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