ラカンの精神分析
~新宮一成、自己-他者のバランスと黄金数~
-最終更新日:2010年11月5日(金)-

いきなり数式を表記されて唐突に思われるかもしれない。この対象aとはラカンの精神分析に登場する重要なテーマである。この著書の新宮一成氏は私の大学在学時代の指導教官の一人である。
自分とはいったい何だろう。この問いかけは古今東西の哲学・思想に通底する。精神分析とは、このバランスが崩れてしまった人を診るということである。そのためには分析家との語らいにおいて、人間であることのせき立てが行われなければならない。自分がほかならぬ人間であることを証明しようとするとき、人間は走りだす。そのときに、クライアントは分析家のまなざしに対象aを見るのである。
この対象aは黄金数に他ならない。黄金数とは、長方形で長辺xと短辺yの比が長辺xと短辺yと長辺xの和に等しくなるとき、その比率をいう。
上記の長方形を見ていただきたい。長方形がこの比率をとるとき、最も美しい長方形といわれている。例を挙げると、ギリシャのパルテノン神殿、テレホンカード、モナリザの構図、液晶ワイドテレビなどである。人間は、直感的にこれらの長方形を美しく感じる先天的な美的感覚を持っているのである。
同様に、自己と他者の関係もこの黄金数がもっとも調和のとれた割合と言われている。自己xが他者yに投影して見る姿が、自己と他者の総和x+yから自己xを見る姿に一致するとき、自己は神の視点をもって自らを見つめている。これは汝の隣人を愛せよというキリスト教の原点に合致する。鏡をもってしか自分の像を視れない人間の悲劇を、他者の愛のまなざしが救うのである。
今回の記事、これまでで一番難しいと思う。筆者も当初は「ラカンはワカラン」だったのである。大学で勉強したときにこのように最高の知の一つに触れることができたのが筆者の幸せである。
【2010年11月4日(木)追記】
ちなみに、筆者は指導教官を決めるときに各教授に面接にお願いした。このなかで新宮教授とお話ししたとき、ルイス・ブニュエルの「エル」を持ちだしたらニヤッと笑われたのを覚えている。ジャック・ラカンが講義で用いたからだ。教授のツボをつくことができていい話になって嬉しかったのを覚えている。
また、一般教養科目の精神病理学基礎論で自分の夢を発表して夢分析を受けたのも思い出深い。氏の夢分析を受けたときにアンドロイドの話をすると嬉しく思っていただけたのを覚えている。ここでは、ブニュエルの「エル」とフロイトの「夢判断」を追記して掲載する。また、上の記事にジャック・ラカンの「鏡像段階」を追加した。ぜひこれらの作品に触れていただけたら幸いである。
-最終更新日:2010年11月5日(金)-
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いきなり数式を表記されて唐突に思われるかもしれない。この対象aとはラカンの精神分析に登場する重要なテーマである。この著書の新宮一成氏は私の大学在学時代の指導教官の一人である。
自分とはいったい何だろう。この問いかけは古今東西の哲学・思想に通底する。精神分析とは、このバランスが崩れてしまった人を診るということである。そのためには分析家との語らいにおいて、人間であることのせき立てが行われなければならない。自分がほかならぬ人間であることを証明しようとするとき、人間は走りだす。そのときに、クライアントは分析家のまなざしに対象aを見るのである。
この対象aは黄金数に他ならない。黄金数とは、長方形で長辺xと短辺yの比が長辺xと短辺yと長辺xの和に等しくなるとき、その比率をいう。
上記の長方形を見ていただきたい。長方形がこの比率をとるとき、最も美しい長方形といわれている。例を挙げると、ギリシャのパルテノン神殿、テレホンカード、モナリザの構図、液晶ワイドテレビなどである。人間は、直感的にこれらの長方形を美しく感じる先天的な美的感覚を持っているのである。
同様に、自己と他者の関係もこの黄金数がもっとも調和のとれた割合と言われている。自己xが他者yに投影して見る姿が、自己と他者の総和x+yから自己xを見る姿に一致するとき、自己は神の視点をもって自らを見つめている。これは汝の隣人を愛せよというキリスト教の原点に合致する。鏡をもってしか自分の像を視れない人間の悲劇を、他者の愛のまなざしが救うのである。
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今回の記事、これまでで一番難しいと思う。筆者も当初は「ラカンはワカラン」だったのである。大学で勉強したときにこのように最高の知の一つに触れることができたのが筆者の幸せである。
【2010年11月4日(木)追記】
ちなみに、筆者は指導教官を決めるときに各教授に面接にお願いした。このなかで新宮教授とお話ししたとき、ルイス・ブニュエルの「エル」を持ちだしたらニヤッと笑われたのを覚えている。ジャック・ラカンが講義で用いたからだ。教授のツボをつくことができていい話になって嬉しかったのを覚えている。
また、一般教養科目の精神病理学基礎論で自分の夢を発表して夢分析を受けたのも思い出深い。氏の夢分析を受けたときにアンドロイドの話をすると嬉しく思っていただけたのを覚えている。ここでは、ブニュエルの「エル」とフロイトの「夢判断」を追記して掲載する。また、上の記事にジャック・ラカンの「鏡像段階」を追加した。ぜひこれらの作品に触れていただけたら幸いである。
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