日米同盟のあり方を考える②
~前回に引き続き、ジェームズ・ベーカー氏のインタビューから考察する~
-最終更新日:2011年1月5日(水)-
掲載が遅れてしまって申し訳ない。前回のジョセフ・ナイ氏の「日米同盟のあり方を考える①」に続き、第二段である。今回は2011年1月4日の読売新聞に掲載された、米国共和党の重鎮ジェームズ・ベーカー氏によるインタビューから考察する。ちなみに書籍は氏が1997年にブッシュ元大統領の国務長官だった激動の時代の回顧録である。
この日の読売新聞によると、ジェームズ・ベーカー氏は日本はいまだ世界第三位のプレーヤーであり、国際的な重要性は何も失われていない。その上で、自由主義貿易によって日本の本来性を取り戻せば、浮揚も可能だとしている。その上で重要な点は以下のことであることを強調している。
日本が再び世界で輝くには、内なる強さを見つめなおす必要がある。民族間の対立がないこと、民主主義への決意、勤勉な国民性を強みとして、困難から立ち上がれると信じることだ。
筆者はこの言葉に強い共感を覚える。まさにアメリカが民主主義の黄金時代を築いた時の国務長官である。氏はこの書籍で「この男(ブッシュ元大統領)がいなければ時代が変わっていたかも知れない」と述べている。冷戦時代を終え、ソ連の崩壊やイラクの湾岸戦争を切り抜けたアメリカに付き従っていた人物である。鉄の精神で民主主義を守ろうとしたことがうかがえるのである。
そのベーカー氏も日米同盟が重要だと強く主張する。前回述べたように、一度関係が希薄化してしまっては、環太平洋の民主主義に大きなマイナスの影響を及ぼすからだ。それは北朝鮮の脅威が強く示している。「日米関係の強化に努めた人間として、日本で安保50年にあたって支持を低調なのを見るのはつらい」と述べている氏は、共通の価値観として両国に根ざしてきた安保の復活を願っている。筆者も同じ気持ちである。
ちなみに、アメリカ共和党といえば新自由主義経済路線のイメージが強く、そのように氏を見てしまいがちだ。しかし、インタビューでは国際的な財政均衡が必要だという主張をしている。これはグローバリズムの加熱によって発生した赤字国と黒字国の格差を修正する論であり、氏に対する浅はかなイメージの押し付けは控えなければならない。それはすなわち、日本の国益を代弁したものでもあるからだ。
懸命な読者の皆さんは、ジョセフ・ナイ氏とジェームズ・ベーカー氏から得られる知見が多いことに気付くはずだ。日本の政治にブレイクスルーが必要とされる昨今、国民である我々も真剣に考えなければならない。
-最終更新日:2011年1月5日(水)-
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掲載が遅れてしまって申し訳ない。前回のジョセフ・ナイ氏の「日米同盟のあり方を考える①」に続き、第二段である。今回は2011年1月4日の読売新聞に掲載された、米国共和党の重鎮ジェームズ・ベーカー氏によるインタビューから考察する。ちなみに書籍は氏が1997年にブッシュ元大統領の国務長官だった激動の時代の回顧録である。
この日の読売新聞によると、ジェームズ・ベーカー氏は日本はいまだ世界第三位のプレーヤーであり、国際的な重要性は何も失われていない。その上で、自由主義貿易によって日本の本来性を取り戻せば、浮揚も可能だとしている。その上で重要な点は以下のことであることを強調している。
日本が再び世界で輝くには、内なる強さを見つめなおす必要がある。民族間の対立がないこと、民主主義への決意、勤勉な国民性を強みとして、困難から立ち上がれると信じることだ。
筆者はこの言葉に強い共感を覚える。まさにアメリカが民主主義の黄金時代を築いた時の国務長官である。氏はこの書籍で「この男(ブッシュ元大統領)がいなければ時代が変わっていたかも知れない」と述べている。冷戦時代を終え、ソ連の崩壊やイラクの湾岸戦争を切り抜けたアメリカに付き従っていた人物である。鉄の精神で民主主義を守ろうとしたことがうかがえるのである。
そのベーカー氏も日米同盟が重要だと強く主張する。前回述べたように、一度関係が希薄化してしまっては、環太平洋の民主主義に大きなマイナスの影響を及ぼすからだ。それは北朝鮮の脅威が強く示している。「日米関係の強化に努めた人間として、日本で安保50年にあたって支持を低調なのを見るのはつらい」と述べている氏は、共通の価値観として両国に根ざしてきた安保の復活を願っている。筆者も同じ気持ちである。
ちなみに、アメリカ共和党といえば新自由主義経済路線のイメージが強く、そのように氏を見てしまいがちだ。しかし、インタビューでは国際的な財政均衡が必要だという主張をしている。これはグローバリズムの加熱によって発生した赤字国と黒字国の格差を修正する論であり、氏に対する浅はかなイメージの押し付けは控えなければならない。それはすなわち、日本の国益を代弁したものでもあるからだ。
懸命な読者の皆さんは、ジョセフ・ナイ氏とジェームズ・ベーカー氏から得られる知見が多いことに気付くはずだ。日本の政治にブレイクスルーが必要とされる昨今、国民である我々も真剣に考えなければならない。
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